「チョリップ村の【お約束の書】の物語」1ページ~4ページ
「チョリップ村の【お約束の書】の物語」5ページ~9ページ
それからというもの、村人たちは、何をしたら他の人よりも、便利な暮らしができるのだろうとか、どうしたら人から羨ましがられるのだろうとか、そんなことばかり考えるようになりました。
他の人と自分を比べては、勝った負けたと一喜一憂したり・・・
そんな刺激的な日々はどんどん過ぎていきました。
村の中にはすごく裕福な家と、とても貧乏な家があらわれ、あっちでも、こっちでも、人の噂話をしています。
ついには、子どもたちまで貧乏な家の子を、ばかにするようになりました。
ある日、立派になられた王様が村人たちをお城に集めました。
すっかり変わってしまった村を心配して、【お約束の書】を読み上げる
ことにしたのです。
「そんな古い書、いまどきじゃないよ!」村人達が、ガヤガヤと騒ぎだしました。
「この村の昔からの決まりです。きちんと守っていただかないと困ります。村人みんなで決めたお約束ですから!」と王様。
すると、すっかり権力を持った新しい住人が、
「今の村人から不満が出ているんだから、いまどきに改定しようじゃないか!オラが新しい【お約束の書】を作ってくるから、みんなでどっちが
良いか話し合おう!」と提案しました。
新しい住人は家に帰ると早速《改定 お約束の書》を作り、つぎの日にはみんなを森に集め、読み上げました。
合言葉は「自分の欲望をみたし、みんなが満足いく村づくり」です。
老人達は、村人の多くが【お約束の書】の改定に反対すると思っていたのですが・・・・
驚くことに反対する村人も少なく、代表者たちも特に意見を持っておらず・・・・
新しい住人は、代表者の話し合いをすることなく、勝手に《改定 お約束の書》に変更することを、決めてしまいました。
村人たちは、別に【お約束の書】の改定に、賛成だったわけじゃなくて、自分の生活には関係ないだろうとか、考えてもよく分からないからなどと、【お約束の書】に興味を持っていなかっただけだったのです。
さて、大切な【お約束の書】を改定してしまった村はどうなったのでしょうか?
裕福な家と貧乏な家の差はどんどん広がり。
頭の良い人、権力のある人の言うことばかりが優先され。
少しでも意見が違うと、お互いを否定し合い、
自分の話したことは全て、村に報告され、
「あっち派」「こっち派」と勝手に決め付けられ、
権力がない人は、苦手な仕事でも、やりたくない仕事でも、
がまんしてやらなくてはいけないし。だからといって不満も言えず。
武器を持ってしまったので、他の村から挑発されるようになり
いつ戦いが起きても、おかしくない緊張感が漂う始末。
村に対して何かおかしいと感じても、それを言うと逮捕されてしまうので、何も言うことができず、
こんな村では安心して子どもを育てることは無理で、
いつでも不安を抱えている子どもたちは心を閉ざし、本当の自分の姿を
見失っていました。
【お約束の書】が《改定 お約束の書》になってしまったチョリップ村の人たちは、自分を守ることに精一杯で、疲れ果ててしまいました。
成功している人と自分を比べては自信を失い・・・・
弱虫だと思われたくないから、自分に無理をする人も増えました。
自分に無理をして暮らしているうちに、自分を信じること、
そして自分を愛することができなくなっていきました。
色々な事柄に目をむけ、考える余裕もなくなってしまいました。
生活と仕事に追われる毎日、多くの村人が、あたりまえの日々に、
目の前にある小さな幸せに気がつくことも、感謝することもできなく
なっていました。
つづく (クリックで16ページ~最後まで)
お読みいただきありがとうございました。
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